児童養護施設の子ども
チチは児童養護施設の設計をしていた。要保護児童がより家庭的な養育を受けられるような施設の設計をしていた。
その設計作業中に色々な児童養護施設を見学した。中には本当に素晴らしい理念を持って運営されている施設もあった。そこにいる子どもたちと遊べば、何も問題を感じなかった。純粋無垢な子どもたちは掛け値無しにかわいかった。ふと、「こんな良いところに居れて良かったね」とさえ思えた。
イヤイヤ、そんなことはないはずだ。でもそう思ってしまうほどにそこにいる子どもたちからは親と暮らせないことの苦悩が見えなかった。
そうか、子どもは悪くないんだ。と思った。当たり前のことだけど、実感した。
施設で信頼できる大人に触れてやっと見せることができるようになったこの子たちの笑顔が実の親によって曇らされることがあると聞いてやるせなくなった。
施設の養育はより家庭的であるように進化している。それは素晴らしいことだけれど、家庭“的”と家庭はやはり違う。
より多くの子どもに健全な家庭を与えるにはどうしたら良いのかと考えるようになった。